筆者の経験上、ECサイトのリニューアルの多くは”障害が多い”、”やりたい事が今のシステムでは実現できない”という課題がキッカケでECをリニューアルを行なう事が多いです。
ですから、ECサイトのリニューアルの着手前に、現状のサイトの課題を明確にして、サイトのリニューアルの目的をはっきりさせる必要があります。それによって、下記のどの方式でリニューアルするか決定するからです。
①ASP
②ec-cube
③パッケージ
④フルスクラッチ
しかしサイトリニューアルにおいては、目の前の課題や目標だけではなく、数年先を考慮してリニューアルを行わないと、長期的に見てコストが高くなったり、あとで問題が発覚してEC担当者のあなたに責任が問われるかもしれません。
本日はECサイトリニューアルのシステム毎の注意点を、EC業界に10年以上いた筆者が紹介いたしますが、趣味でやっているブログなので間違ったらごめんなさい。
ECサイトリニューアルでまず最初に着手する事とは?
ECサイトのリニューアルの場合、まず現状の課題を新システムで解決する必要がありますから、現在使っているシステムの課題の洗い出しから入ります。具体的には次の①と②の流れです。
①現在のサイトの課題の本質を見極める
例えば、「ECサイトの障害が多い」といった課題に対して、なんで障害が多いのか?どこがネックなのかを見極める必要があります。例えば「障害が多い」もいろんな原因が考えられるからです。
「ECサイトに障害が多いのは、ベンダーの人的ミスが多いからだ」
「ECサイトに障害が多いのは、インフラ面が不安定だからだ」
「ECサイトに障害が多いのは、システムが不安定だからだ」
このように単に”障害が多い”と騒ぐのではなく、問題の本質や原因がどこにあるかを特定して、問題を新システムでは再現しない事が重要なのです。
つまり「今のシステムベンダーは障害が多いから変更する」と考える前に問題の原因がどこにあり、誰の責任でそうなったのかを把握する事です。これを解決しないと、実は問題の本質が自社の体質にあった場合、システムベンダーを変えても障害は減りません。
また優秀なシステムベンダーほど、いわゆる”地雷案件”(わかりやすく言うと、このお客様と付き合うとやっかいな事になりそうだ!という意味です)の察知は敏感で、仕事を引き受けてくれないケースもあるからです。
優秀なベンダーから相手にされないと、相手にしてくれるのは、なんでも引き受けるベンダーという事になります。そんな事にならないように問題の所在をはっきりさせましょう。
②3~5年先までのECサイトの会員数の推移や将来の予定を要件に入れる。
ほとんどのEC担当者が「現在必要な要件」だけを、意識していますが、それは大きな間違いです。3年後、5年後にECサイトの”会員数の推移”や”ECでやりたい事”を要件に入れておく必要があります。
例えば、物流システムの連携など、リニューアル時には連携できなくても、数年後に連携可能かどうかだけを見極めておく必要があります。事前に検討しておけば、数年後のシステム連携可能なシステムをリニューアル時に選定する事ができるからです。
「まー、その時はまたリニューアル検討するからするから」などと考えてはEC担当者失格です。ECシステムはソフトウェアであるので、会計上の減価償却が5年かかります。ですから最低でも5年は耐用できるECシステムを検討しなくてはいけません。ですから、その5年間に起こりうる、下記のような事を検討した方がよいでしょう。
・数年後のECサイトの集客・会員数の推移
・数年後にECサイトで実現したい事
・数年後にECサイトと連携すべきシステム
・数年後に試してみたいWEBツール
・オムニチャネルの実現
将来実現したい可能性のある事は、ECサイトのリニューアル時の企画書にいれておく必要があります。では次にECサイト構築方式別の予算感について解説いたします。
ECサイトのリニューアル規模別の予算
各方式別のサイトリニューアルの予算感です。
ECサイト構築方式 | リニューアル費用感 |
---|---|
ASP | 数十万円~ |
ec-cube | 数百万円~ |
パッケージ | 数百万円~数千万円 |
フルスクラッチ | 1000万円以上 |
ざっくりとした感じですが、これくらいの費用がかかります。ec-cubeやパッケージの場合は、ほぼ標準機能で使う場合は、もっと値段を抑えることができますが、リニューアルを考えている方は標準機能のままで対応できる事は、まれだと思います。
それでもなんとかコストを抑えたいという方は、業務フローをECシステムの標準機能に合わせる事になりますが、課題や目標があってのリニューアルですので、それを達成できないシステムを導入する意味はありません。
では、次に各ECシステム毎にリニューアル時の注意点をご紹介いたします。
(1)ASPへのリニューアルの注意点
もし、十分に検討した上でASPを導入するという事であれば、コストが安く、導入も簡単なASPでがいいでしょう。しかもASPはシステムが古くならないというメリットもあります。
ただし、ASPはシステム連携やカスタマイズができませんし、性能や機能に制限がありますから、先に述べた通り、ASP導入の際は数年内の事業計画において、システムの拡張や急激な会員数の増加による負荷増大の懸念がない事を確認する必要があります。
(2)ec-cubeへのリニューアルの注意点
現在のECシステムからec-cubeへリニューアルを検討している方は、下記の2点に注意しましょう。
①今導入しようとしているec-cubeの寿命は1年半しかない事
オープンソースで無料のec-cubeをベースにECサイトをリニューアルすれば、ライセンス費用がかかりませんが、下記の事を踏まえておきましょう。
・ec-cubeが新しいバージョンがでるのは3年程度。
・ec-cubeのバージョンがリリースされても、リリース後1年は様子を見たほうがよい。
・ec-cubeの新しいバージョンが出ると、古いバージョンはサポートやパッチの供給が終わる。
上記にプラスして、ec-cubeの導入開発期間を半年とした場合は、現行バージョンのec-cubeの寿命は約1年半しかないのです。(セキュリティーパッチやサポートが切れてもサイトが動かないわけではありません)
②カスタマイズしてしまえば、新しいec-cubeへのバージョン移行は厳しい
もちろん新しいバージョンが出れば、ec-cube社も新しいバージョンへの移行ツールを提供しています。しかしカスタマイズしてしまえば、このツールは使えません。
③ec-cubeベースのシステムの障害の責任は自社になる
例えば極端な話、最近世間を賑わせた”大企業の個人情報漏えい”がありましたが、もしそれが、ec-cubeベースのシステム側が原因でそのような事があった場合、責任をとるのは導入したECサイト運営会社になります。
なぜなら、ec-cubeはフリーで提供されているものであり、あなたの会社と直接の取引はないので、なんの契約もありません。また、ECサイト構築を依頼したシステム会社がec-cubeをベースにシステム開発している場合も同じ事です。
そのシステム会社との契約書をチェックすると、「ec-cube本体のバグは責任の範囲外」という文言が必ずあるはずです。システム会社がec-cubeを使ってシステムを作る場合は、契約書をチェックするようにしましょう。
以前、ECのオープンソースの問題点には、触れたので詳しくは、下記をご覧ください。
(3)パッケージへのリニューアルの注意点
業務フローをASPに合わせることができたとしたら、ASPはコストも安く、サーバー管理が不要という事もあり、大変よいサービスです。しかし、ECサイトの規模の拡大や、システム連携を考えはじめると、ASPだと手狭になってきます。
大規模な案件ですとコンサルタントに入ってもらい、業務フローを整理した上で、フルスクラッチやパッケージによる新ECシステムの導入を検討すると思います。システムだけでなく大量のドキュメントが納品されますが、そのプロのコンサルタントでも、あまり考慮されていない事があります。
それは導入したシステムが古くなる事です。ASPはシステムが自動的にアップデートされていましたが、フルスクラッチやパッケージや、システムが古くなるというデメリットがあるのです。
ですからシステムが古くなる事を念頭にいれて、将来のカスタマイズ費用や、3年後のECシステムの入れ替えの必要性など、当初から企画にいれて予算を別途とっておくとよりでしょう。
(4)フルスクラッチでのリニューアルの注意点
フルスクラッチで、付き合いのある会社にECサイトを依頼する方も多いと思いますが、2つのポイントがあります。
①ECを含めた全システムを付き合いのある会社にまかせると、次のECシステムのリニューアルが困難になる。(システムを全て握られているため)
②ECサイトのノウハウはシステム会社が疎い場合あるので、ECサイトの実績が豊富なシステムベンダーに依頼しよう。(ECパッケージ会社ならば、安心です)
フルスクラッチで作る場合はこの2点は重要です。そしてECサイト業界のトレンドとして、フルスクラッチのメリットが少なくなってきております。
なぜなら、各社のECパッケージのECサイトとしての機能と拡張性が年々向上しており、もはやゼロからつくるフルスクラッチより、ECとして必要な機能があるパッケージをベースに開発した方
ECサイトのリニューアルを行うベンダー紹介!
過去に取り上げた記事で紹介した、大手パッケージ各社に声をかけてみるのがよいでしょう。パッケージの会社に声をかける理由は、ECサイトのノウハウを熟知しているからです。
最後に
筆者の経験ですと、ECシステムの選定は、自社に技術力がなかったり、専門家がいない場合は、なんとなく付き合いのある会社や、たまたま紹介された会社に選定されることが多いのです。その原因は、EC担当者自身が、どのシステムを選べばいいのか判断軸をもっていないからです。
本日の記事を読んでもらい、ECサイトリニューアルの参考にしてもらえれば幸いです。
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