大規模ECサイト構築をパッケージで行う理由と大手5社紹介

15年も前なら、サイト年商が50億円を超えるような、大規模ECサイトの構築はシステム会社に依頼して、フルスクラッチで時間とコストをかけて構築するのが一般的でしが、現在においてはそれは時代遅れな手法です。

大規模ECサイトは「フルスクラッチ」ではなく、「パッケージ」で構築するのがマーケットの主流になりつつあります。なぜなら、パッケージのベンダー各社はパッケージの機能をどんどん拡張しており、すでにどんな要件も実現可能になっているからです。

すでにECに必要な機能が実装されているパッケージをベースに大規模ECを構築した方が、「コスト」と「構築スピード」の両方においてゼロから作るよりメリットがありますから、フルスクラッチで構築するメリットが全くなくなっております。

本日はEC業界に10年いた筆者が、大規模ECサイトの構築で選ぶべきパッケージベンダー5社をわかりやすい業界地図でご紹介いたしますが、なにせ個人でやっているブログなので間違っていたらごめんなさい!

なぜフルスクラッチが、大規模ECサイトの構築に適さないのか?

大規模ECサイト構築において、なぜゼロからつくるフルスクラッチが時代遅れな選択なのでしょうか?それははっきり言うとコストが無駄だからです。

またフルスクラッチを行うシステム会社は、システムには強いかもしれませんが、ECサイトのノウハウに関してはECパッケージベンダーの方が豊富です。(EC経験豊富なシステム会社もありますが。)

下記の業界地図をご覧ください。

フルスクラッチからASPまで網羅したECサイト構築業界地図

業界図

図を見てもらえばわかると思いますが、年々ECパッケージは標準機能の拡張や、カスタマイズ性を高めています。極論するともはや、パッケージで実現できない機能はほぼないのです。

(図のとおりASPも年々機能拡張しており、ECのフロント機能はパッケージに迫る製品も出ておりますが、カスタマイズができず、キャパシティーにも限界があるため、大規模ECサイトには向いておりません。)

パッケージの場合の大きな懸念である企業毎の基幹システム等の連携や、独自のフローにあわせたシステムの構築ですが、パッケージのカスタマイズで完全に対応できます。

その証拠に本日紹介する大手5社には、基幹や物流といったシステム連携がかなり複雑な大規模ECサイトの構築経験も豊富にあるからです。(むしろECを専門にやっている会社の方がECとのシステム連携面においてはノウハウがあります。)

また、大規模ECのトランザクションに耐えうるサーバーのキャパシティーという課題も、それこそフルスクラッチと同様に、それ相応のサーバーを用意するのですから、フルスクラッチとパッケージに差異はありません。

つまり、最初からECに必要な機能を持ち合わせているパッケージをベースに大規模ECサイトを構築する方が、ゼロから作るフルスクラッチより、コストが安くなるのです。

さらにもう一つ理由パッケージの方が良い大きな理由があります。

大抵、企業がフルスクラッチでECサイトを構築する場合、”すでに付き合いがあり、自社システムで実績のあるシステム会社”に頼む事が多いと思いますが、一度ECサイトをフルスクラッチで導入してしまうと、ECに障害が多く発生した場合など、ECを含めたシステム全体をシステム会社に握られているため、ECだけ切り出して、他の会社に乗り換えづらくなるという大きな欠点も念頭に入れて置きましょう。

まあそうは言っても、普段からお世話になっているシステム会社にECサイトを依頼するのは、管理する方としては楽なんですけどね〜。意外とこういうこと知らないEC担当者が多いですから、ちゃんとパッケージも検討したほうがいいです。

とはいえ、矛盾してますが、スーパー大手はやはりフルスクラッチかも・・

と、ここまでは偉そうにパッケージ推しで解説しましたが、とはいえパッケージにも弱点があります。それは、パッケージベンダーへの依存度が増すことです。例えば、自社でマーケティング施策をゴリゴリにやりたい会社は、どうしてもシステム改修の速度を速めないといけません。

そうなるといくら関係性の良いシステム開発ベンダーであっても、開発スピードは自社開発に劣ります。そのため、スーパー大手企業は、けっこうパッケージから自社開発にシフトしているケースもあるのです。特にマーケティングいっぱいやりたい会社などは。

ただ、それにも失敗するケースはあって、下記のユナイテッドアローズさんは、自社開発に失敗した事例としては結構有名です。

2か月半の自社EC停止…ユナイテッドアローズは「調査結果に基づき適切な処置を下す」「自社運営化とオムニチャネルサービスは必ずやり遂げる」

ですから、よほど自社に技術力や体制が整っていないと、自社開発は厳しいので、並みの大規模ECサイトの場合は、筆者はパッケージが主役と考えるのです。

また、パッケージで実現できたとしても、ECのパッケージ会社が受けてくれない案件もフルスクラッチしか方法がありません。例えば、飛行機の予約システムのようなECサイトと関係のない機能などをECに実装を依頼したり、基幹システムの一部の機能をECサイトが担うなど、本来のECサイトとは大きく異なる機能は、パッケージ会社も嫌がるのです。

大規模ECには、どのECパッケージベンダーがいいのか?

もし大規模ECサイトの構築や乗り換えをするなら、付き合いのあるシステム会社と一緒にパッケージベンダーを呼んで提案を受けた方がいいです。

結局、付き合いのあるシステム会社を選定する事になったとしても、比べられると気合いも入りますし(付き合いが長いシステム会社は、あぐらをかいている事が多いので!)、パッケージベンダーのプレゼンを聞いて、その観点をシステム会社に取り入れてもらうのもいいでしょう。

いずれにせよ、構築費用が数千万から数億円のプロジェクトでしょうから、複数の会社から提案をもらう事になると思いますが、その提案には大手のパッケージベンダーにも声をかけるようにしましょう(意外とコンペもせず、付き合いのあるシステム会社がECを開発する事が多いんですよね〜)

では、大規模ECサイト構築、EC業界10年の筆者がコンペに呼ぶべき5社を紹介します。まずは、パッケージ業界の全体感を掴むために、下記のパッケージ業界の図をご覧ください。

ECパッケージベンダー5社のポジショニングの業界地図

青い角丸四角はパッケージベンダーの通り名です!

ECパッケージポジショニングマップ

 

この図は、私がEC業界にいた頃の少し前のECパッケージベンダーのポジショニングを表したものです。(完全に個人の独断と偏見で作りました。)それでは上記の5社で筆者のお勧め順に紹介してまいります。

私のおすすめは、「ecbeing(ビーング)」「えびすマート」ですね、大規模ECサイトの構築の場合、先の3社に比べると、コスト的にメリットがあるからです。

それでは大規模ECサイト構築にふさわしい5社を順に説明いたします。

1社目 ecbeing(イーシービーング)

EC業界の人は”ビーングさん”と言ったりします。何より1600サイト以上のECサイト構築実績がありますし、大規模ECサイトもずいぶんノウハウをもっています。また営業マンが優秀な事でも有名ですので、話を聞いてみてはいかがでしょうか?上場企業なのも安心です。

パッケージ業界では一番有名な会社ですし、ビーングさんはトラブルも少なくて評判です。なにしろ開発部隊・運用支援部隊あわせて700名以上という盤石のサポート体制なので保守対応もバッチリでしょう。

EC業界を代表するベンダーといっても差し支えのない企業です。

ecbeing社の記事はこちらから!

2社目 えびすマート(ebisumart)

実績は750社を超えて、ビーングの後を追っているのがえびすマートさんです。”クラウドのEC”というのは面白いシステムです。パッケージやフルスクラッチの最大の弱点はシステムが5年も過ぎれば、古くなり、新しいシステムを入れる必要がある点ですが、えびすマートはまるでASPのように自動でシステムが更新されるのに、フルカスタマイズができるのは画期的なシステムです。

クラウドのくせにフルカスタマイズできる面白いシステムですが、「システムやサーバーはオンプレで!」という前提がある企業にはクラウドなので全く向いていません。

最近、えびすマートさんはECのコンサルにも力をいれており、構築案件だけでなく、コンサルも実施しておるようです。やはり、ライバルのecbeingもコンサルでかなりがんばってますから、その影響かもしれません。

コンペするときは、変化球として面白いので、呼んでおきたい1社となります。

クラウドECのえびすマートの記事はこちらから!

3社目 SI Web Shopping(システムインテグレータ)

SI Web Shoppingは日本ではじめてのECパッケージと言われており、実績は十分です。システムを依頼するときに、ある程度の会社規模や実績がないと、社内稟議が通らない!という大手の方も安心です。

ただしパッケージの中でも、かなり高額ですので、見積もってみたらフルスクラッチと同じ金額だったという事になるかもしれませんが、昨今は直販(SI WEBショッピングはSIerが担ぐことがおおいので)にも力を入れているので、コンペで呼ぶと価格感はそうでもないかもしれません。

とりあえず、日本で実績のある1社なのでこちらも間違いないのではないかと思います。

SI WEB Shoppingの記事はこちらから!

4社目 W2ユニファイドコマース

W2は、2社目で紹介したえびすマートと同じ仕組みで、クラウドでありながらカスタマイズできるECプラットフォームです。えびすマートと同じで、大規模向けのECに向いているECプラットフォームです。

W2の特徴というか、W2が狙っているターゲット会社は「オムニチャネル」を実現させたい、あるいはすでに実践しいてる大手小売会社です。W2はユニファイドコマースを訴求することで、テンポとECの連携ならW2で!というブランディングに力を入れている印象です。詳しくは下記の記事をご覧ください。

W2の記事はこちら!

5社目 コマース21

コマース21は大規模ECサイトとしての実績は今日の5社の中でNo.1です。そしてソースコードを開示しているので、フルスクラッチのようにメンテナンスを自社でやりたい会社や、自社で全て把握したい会社には向いてます。また大規模ECサイトの事例が多い点もポイントです。

ただ気になるのが、コマース21さんは、最近はぱっとした話はきかなかったのですが、それはYahooに買収されたり、Eストアーに買収されたりと株主が定まってなかったせいだと思います。今はEストアーさんが株主となって安定してきた印象です。詳しくは下記記事をご覧ください。

コマース21の記事はこちらから!

商品中心の時代から顧客中心のマーケティング時代に変わったから大規模向けはECサイトは大変です。

ひと昔まえには「オムニチャネル」という言葉が流行りましたが、その言葉は「OMO」となり、今では「ユニファイドコマース」となりました(細かい違いはわかりませんが)。

大手小売はユニファイドコマースを実践する必要があります。なぜなら、日本の市場はこれ以上は大きくならないため、新規顧客を取り合うのではなく、ファンを増やしていくマーケティングを実践する必要があります。

そのため、ユニファイドコマースを実践して、店舗とECサイトの垣根をなくして、顧客中心のマーケティングを実践する必要があるのです。

本日紹介した5社はいずれもユニファイドコマースのシステム基盤を作ることができるので、大手さんはお声がけしてみましょう。

大規模ECプラットフォームのコンペはここに注意しろ!

もし、大手小売がフルスクラッチ以外のパッケージでコンペするとしたら、今日あげた5社の2社は間違いなくコンペにきます。そこで気を付けて欲しいのが、「できないことをコミットする営業です」。

EC大規模コンペにあるあるの展開なのですが、コンペで、主催者から「○○までに作れますよね?」あるいは「○○億円でつくれますよね」と結構無茶なことを言ってきます。そして、ECプラットフォームの営業は案件をとりたいので「はい!できます!」といいますが、そのような場合、たいてい納期や予算が守られることはありません。

馬鹿正直に「そのスケジュールは無理です」「その予算では無理です」というECプラットフォームの会社がありますが、コンペでは負けてしまいます。ですから、コンペでは「できません!」といった会社の方が、筆者の体験だと信用できる可能性が高くなるので、このあたりもコンペではよく検討した方がよいはずです。

最後に

いかがでしたでしょうか?本日は大規模ECサイトをパッケージで構築するメリットと、おすすめのECパッケージベンダー5社を紹介しました。先にも説明しましたが、もはやフルスクラッチでECサイトを作るメリットはありません。

ただ最後に筆者が申し上げたい点は、会計上システムの減価償却は5年です。導入したシステムはパッケージであろうと、フルスクラッチであろうと必ず古くなります(ASPやクラウドECは別ですが)。

ですから、導入するからには5年の使用に耐えるシステムを選定するために、要件定義においては直近の要件だけでなく、数年後に導入するシステムやプロモーションも要件に入れて、RFPを作ってくださいね。

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