ひと昔まで、ECサイトと言えばフルスクラッチで一から作ったり、ある程度ECに必要な機能が揃っているパッケージをカスタマイズしてECを構築していました。
しかし、今はASPなどシステムが古くならないクラウドECが世に出てきており、高額なフルスクラッチやパッケージではなくてもECを構築できる時代になってきました。
まずクラウドECといえば世間ではどのようなイメージでしょうか?インターネットでクラウドECシステムを検索すると、下記の3パターンがあります。
①ASP(MakeShop等)
②カスタマイズができるクラウドEC(えびすマートやメルカート)
③サーバだけがクラウドのパッケージシステム
このように、クラウドECといっても、選択肢がずいぶん増えてきました。クラウドECの最大のメリットは「ソフトウェアの更新」や「サーバー保守」が不要なことです。
本日は、最近のECシステムのトレンドの「クラウドEC」について、EC業界に10年いた筆者が解説いたしますが、趣味でやっているブログなので間違っていたらごめんなさい。
まずはクラウドECとは?
クラウドECとは?どういったものをいうのでしょうか?
・クラウド環境で、ECサイトが管理・運営できる事
・インフラやECシステムを自社で持たない。
・ECシステムが常に最新であること。(自動アップデートで機能が更新)
といった要素です。そのほかにクラウドの可用性といった要素などもありますが、サーバーの観点が強いため、クラウドECシステムの定義には入りません。それでは世間で「クラウドEC」と呼ばれているサービス①〜③を順に解説していきます。
クラウドEC① ASP
まず、ASPとクラウドは同じ意味であるということが下記サイトで定義されております。ですからASPもクラウドECと位置づけることができます。
ASPICのサイトより引用:クラウドコンピューティングの意味
ECサイトにおいて最も導入が多いECシステムであり、EC担当者はブラウザ上で、ECの管理・運用が一元管理できます。クラウドのASPはシステムが常に最新に保たれ、もちろんサーバー等のインフラを自社でもつ必要もありません。
何よりもASPはパッケージやフルスクラッチに比べて費用が安い!のが最大の魅力です。しかしそんなASPの弱点は、
・カスタマイズができない
・システム連携ができない
この2点が最大の弱点です。とはいえ最近のASPはECに必要な機能はほとんど実装されており、あなたの会社の業務を、ASPにあわせる事ができれば、ECサイト運用はほとんど問題ないと思われます。
また部分的とはいえ、「MakeShop for クラウド」のような金額が高めのASPもあり、ASPが絶対カスタマイズできないかといえば、そうでもないようです。
しかし、ホームページを見る限りフロント部分のカスタマイズは出来ないようでもあり、部分的なカスタマイズに終始している印象です。昨今は、MakeShop for クラウドのように、カスタマイズできるASPも増えてきており、少し前よりもASPのカスタマイズ性、柔軟性は高まってきている印象を受けます。
また、システム連携もAPI連携を利用することで、今まではASPとの連携が難しかったシステムとの連携が可能になっています。昨今、SaaSの多くのシステムがAPI提供しているため、一昔前よりも、システム連携も手軽になった印象です。
API連携であれば、お互いのシステムの中に手をいれるわけではなく、用意されたAPIとの連携をするだけなので、多くのSaaSやシステムで利用されております。
クラウドEC② カスタマイズができるクラウドEC
ASPはシステムが古くならないというメリットがある一方で、「カスタマイズ」と「システム連携」ができないというデメリットがありましたが、ebisumartのような少し変わったECシステムもあります。それはクラウド環境にありながら
・カスタマイズ可能
・システム連携可能
という点が、”カスタマイズ可能なASP”というイメージです。ですから最新性が保たれたまま、企業ごとのカスタマイズが可能になります。
ebisumartは特色のあるシステムなので、よくコンペの時は、ECパッケージとの比較がしやすいので、クラウドECシステムとして、(当時はSaaS型と呼んでましたが)ecbeingさんとともに呼ばれておりましたね。
なぜ、クラウド環境のECシステムが、企業ごとにカスタマイズが可能なのでしょうか?それは大きなクラウドの共通プラットフォームの上に、個々の企業のカスタマイズ部分がポコポコ乗っかっているイメージです。つまり下記のようなイメージですね。
ですから、各企業毎にカスタマイズを施しても、自動更新される共通部分のプラットフォームは共有しているため、最新性を保ったまま、カスタマイズ可能なのです。
ただし、ebisumartはカスタマイズ可能な反面、レイヤー的にはパッケージ領域のシステムであり、料金は安くはありませんね。
そして、2017年になんとebisumartさんの競合のecbeingさんがクラウドECの「メルカート」をリリースしました。こちらはecbeingさんのメインの中・大規模ECのなかでも、規模感が小さいECサイトが中心のようです。
メルカートのホームページを見ると、大規模ECに成長する場合は、従来のecbeingパッケージへの移行を進めていることから、ebisumartのように完全カスタマイズ対応ではないようです。
また、メルカートと同じような位置づけとして「ECo2(エコツー)」というクラウドECがコマース21より提供されております。こちらも限定的ですがカスタマイズが可能なクラウドECです。このように、昔はebisumartの専売特許でしたが、徐々に、カスタマイズ可能なクラウドECが増えてきております。
大手なんかでは、セールスフォースからもクラウドのECサービスが提供されているので、この市場も今後は競争が激化してきそうです。
ただ、クラウドの最新性とカスタマイズを両立させるということは、システムの保守がすごく大変なシステムとなるため、長くやってい会社の方が保守のノウハウがたまっています。その点は、エビスマートさんが一歩リードしている印象ですね。
クラウドEC③サーバーだけがクラウドのパッケージシステム
昨今は、パッケージ会社の中にも「クラウドECと言った方がお客さんからの反響が良いな!」ということから、クラウドECではないのに「うちのパッケージはクラウド環境においているからクラウドECです」という会社が出てきた印象です。
厳密には、これはクラウドECではなく、「クラウドサーバーにインストールしたパッケージ」であり、クラウドECというのいうのは無理があるように感じます。
そのため、ECサイトを導入する際、「サーバー以外にSaaSのような要素はないのですか?」「どこがクラウドなのですか?」と明確に聞きましょう。
クラウドECの強みの一つは「システムが古くならないこと」ですが、パッケージであれば、サーバーがクラウドでも、システムが古くなるので、事前にクラウドECなのかをはっきり聞いておいた方がよいはずです。
クラウドECにデメリットは4つ
トレンドであるクラウドECにも、下記4つのデメリットがあります。
デメリット① プログラムソースを開示していない
デメリット② 共有サーバーのため障害が飛び火する
デメリット③ ニッチな機能や自社独自の機能がない場合がある
デメリット④AWSの障害などは避けられない
デメリット⑤データの管理が難しい
①について、大企業に多いのですが、ソースコードの開示を必要とする会社は多いのです。またそういった企業はクラウドを嫌がりますので、相性はよくありません。
②は、クラウドということで導入している会社の多くは、サーバーを共有しているはずです。(占有のとこも大きいとこはありますが)そのサーバー内で同じクラウドサービスの他のECサイトで障害が発生すると、飛び火を食らうというデメリットがあります。また、それだけでなく、AWSなどを使う場合は、AWSの障害にも巻き込まれます。占有サーバーにも同様のリスクはありますが、他責によるものは結構しんどい面がありますからね。
③は、②で書いたように、クラウドは複数の会社がひとつのプラットフォームを共有する形なので、ニーズが多い機能が優先的に実装されていくことになります。「うちのサイトにはこの機能が絶対必要!」といくら叫んだところで、同様のニーズがなければなかなか実現は難しいでしょう。そんなわけで、必然的に使える機能が限られてきてしまうのですが、今後クラウドECが主流となって競争が激しくなってくれば、様々なニッチ機能も標準装備されてくるはずです。
④は、AWSでは数年に一度ではありますが大きな障害が発生します。昨今では2021年9月にも大きな障害が日本で発生しました。
多くのクラウドECはAWSを使っているので、このような障害が起きると、お手上げです。使っているECベンダーに問い合わせても、どうにもなりません。
しかし、このような障害は本当にたまにしかないので、そこまで大きなデメリットではないかもしれませんね。
⑤に関しては、クラウドの大きなデメリットですが、データを自社で完全にコントロールすることはできません。この点が許容できない企業は、クラウドは受け入れられないはずです。
私のお客さんに某大手のスクールビジネス会社がありましたが、AWSの説明を私がすると「そんなあぶないサーバー環境に移行できるか!自社サーバーしかないだろ」と言ってましたが、後日、その発言を聞いたスクールのインフラ担当が「AWSをあぶないというのはオワコン。。このスクールに未来がない」といってスクールを去ったのことは今でも忘れません。
そのインフラエンジニアは今は、AWSを扱っていますw
パッケージやフルスクラッチからクラウドECへの移行(入れ替え)とは?
パッケージやフルスクラッチのECは、最大7年でほぼシステムの入れ替えが発生します。パッケージやフルスクラッチからクラウドECへ移行するケースは、今のECシステムマーケットの一つの流れです。ほとんどが下記の理由です。
・自社でサーバーの管理をしたくない。
・サーバーの担当者をつけたくない(人件費)
・夜中まで一日中サーバーの監視はしんどい
・システムが古くなるたびに入れかえがしんどい
など言われる企業のEC担当者は結構多いです。ただしクラウドECへの移行となると、フルスクラッチやパッケージの“カスタマイズ”や“システム連携”が必須になってきますから、ebisumartやW2などの中大規模向けのプラットフォームじゃないとなかなか上手くいきませんね。このあたりの事情は、以下の記事をよんでみてください。
クラウドECのebisumart(えびすマート)の評判と考察
最後に
本日はクラウドECのシステムについて語ってみました。クラウドという言葉が一般的に使われれうようになって、いろんなECシステムがクラウドECと語っていますが、繰り返しますが、下記の3点を満たすものがクラウドECシステムです。お忘れなく!
・クラウド環境で、ECサイトが管理・運営できる事
・インフラやECシステムを自社で持たない。
・ECシステムが常に最新であること。
それに気を付けて、サーバーだけが、クラウド環境のパッケージを間違って導入しない方がいいですよ!(クラウドECが欲しい場合はですよ!)
大手ECシステムパッケージ各社徹底比較 →