越境ECの成功の秘訣はオムニチャネル

越境ECを検討している企業は多いのではないでしょうか?

昨年からはじまった中国人の爆買いを目の当たりにすれば、当然の流れです。もし自社ECサイトに中国人の需要を取り込むことができれば、倍の売り上げも可能でしょう。

しかし、越境ECは我々ECサイト業界(私は昨年業界から引退しましたが)からみれば、企業から「中国向けの越境ECを検討していますが・・」という案件の話を聞くたびに、またお金にならない話がきたか。。と思うのが、ECサイト業界の本音です。

その理由は、自社で構築した越境ECが成功したという事例が少なく、中国向けの越境EC、特に自社ECサイトの構築には困難で、案件の話が途中でなくなることがほとんどだからです。

でも、安心してください。上司から突然言われた自社ECの越境ECの検討に最適なソリューションを紹介します。それが「越境EC × オムニチャネル」戦略です。

本日はEC業界で10年の経験のある筆者が「越境EC」を解説しますが、趣味でやっているブログなので、間違っていたらごめんなさい!

自社ECサイトの越境EC対応は、中国語対応したところで集客できるわけではない!

まず自社のECサイトを中国語対応にしても、中国人のお客さんは、あなたのECサイトではモノを購入してくれません。その理由は下記の3つのによるもです。

①中国の検索エンジンはGoogleではない

中国人が使う検索エンジンはGoogleではなく、バイドゥ(百度)と言われる検索エンジンです。ですから、日本のサーバーに中国語対応したWEBサイトを作っても、バイドゥ(百度)にインデックス(検索エンジンにヒットすること)されないと、中国人は検索エンジンであなたのECサイトをみつけることができません。

そしてこのバイドゥ(百度)のやっかいなところは、営利ICPライセンスを中国政府から取得したかどうかが、検索エンジンにインデックスされる要素として最も重要なのです。

そしてカンタンに話すとこの営利ICPライセンスの取得は、中国企業と合弁会社を作り、中国にサーバーを置かなくてならず、ここまでするには数千万円になり、中小企業にはノウハウやコストの面で難易度がかなり高いです。

②中国人は検索エンジンで欲しいものを検索しない

そして中国人のWEB上の行動で、日本人と異なるのは検索エンジン上で商品の検索をしないのです。中国人がモノを購入するときは、モール内でしか検索行動をしません。中国で有名なモールは2つで「Tmall(天猫)」と「JD.com(京東商城)」です。

ですから、中国で営利ICPライセンスを獲得したとしても、高いブランド力がないと、モールの外では購入してくれません。

③中国の決済は商品代引きかアリペイ(支付宝)

そしてさらに日本の自社ECサイトの越境ECを困難にしているのは、決済方法です。中国では「商品代引き」が最も支持されている決済方法で、その次がアリペイ(支付宝)による決済です。

カンタンに説明すると、アリペイ(支付宝)とは下記のような仕組みです。

①買い手が、売り手から「商品を購入」します
②買い手が、アリペイ(支付宝)に代金を預けます(凍結と言います)
③アリペイ(支付宝)は売り手に「代金をあずかった」という連絡をします
④売り手は買い手に商品を発送します
⑤買い手は商品が届くと、アリペイ(支付宝)に「商品が届いた」連絡をします
⑥アリペイ(支付宝)は売手に代金を送ります

このように、買い手と売り手が直接やりとりするのではなく、第三者機関のアリペイ(支付宝)を入れて、このようにやり取りをするのです。なぜこのような中国は面倒な商習慣なのでしょうか?それは中国では、偽物が横行しており、消費者が商品を確認してからでないとお金をはらわないからです。

このような事情から、アリペイ(支付宝)による決済や、商案品代引きの決済が中国では一般的なのです。ですから中国向けの自社ECサイトでは、このような決済に対応しないと、中国人は不安で商品を購入してくれません。

また余談になりますが、中国人の間では

・日本で買う、日本製が一番信用できるが、中国国内の日本製はあまり信用できない

という考え方があります。これも中国国内にはあまりに偽物や不正が多いため、中国国内よりも現地の日本で購入したものが最も信用できると考える人も多いのです。

さて、話を決済に戻しますが、ではアリペイ(支付宝)に対応している日本の大手決済会社があるので、その決済を導入すれば問題解決だろう!と思われる方が多いのですが、実はアリペイ(支付宝)対応というのは、先に説明した仕組みのアリペイ(支付宝)ではなく、通常のクレジットカードの与信と同じ仕組みのアリペイ(支付宝)に対応しているのです。

※下記は新宿の家電販売の店でとった写真。中国人観光客向けのアリペイ対応です。

2016-09-06 20.08.43

ですから、アリペイ(支付宝)対応の決済会社を導入しても、中国人が心的障壁がなくモノを購入してくれるかは難しいです。それは銀聯カードも同じです。つまり中国ではクレジットカードになじみがないため、こういった事情も中国向けの越境ECを困難にさせています。

越境ECはテストマーケティングから

筆者がおすすめする方法は2つです。いきなり越境ECのサイトを構築するのではなく、まずはテストマーケティングで小さく越境ECをはじめるのがいいでしょう。2つのテストマーケティングの方法を紹介します。

①転送コムなどの転送サービスで「安く・早く・小さく」越境ECをはじめる

転送サービスをご存じでしょうか?私が一番おススメの越境ECの手軽な始め方です。始め方は、転送コムに申し込んで、指定されたタグを自社サイトにいれるだけです。タグを入れると海外のIPアドレスからのアクセスがあった場合、その国の言語のバナーが表示されます。

海外のユーザーは、そのバナーをクリックして会員登録を行い、転送コムの住所を使って商品を購入します。転送コム

画像引用:http://www.tenso.com/guide/flow/index.html

そうすると転送サービスの会社が、海外に発送するのです。つまり自社ECサイトに手を加えることなく、越境ECをはじめることができます。

ただし、製品や会社に対する認知がないと、中国ユーザーがアクセスしてくれませんから、例えば中国人観光客が実店舗に多くきており、そのユーザーにたいしてチラシ等で「中国国内からでもECサイトでいつでも購入できます」という集客ができる場合に有効です。

②2大モールへの出店

出店料や販売手数料が高くつきますが、中国の2大モール、Tmall(天猫)かJD.com(京東商城)への出店は日本企業が今後もっともとるべき越境ECの手段といえます。その大きな理由は3つです。

(1)大きな集客力

中国人はそもそも、モール内でしか、欲しいモノの検索行動をとらないため、2大モールに出店すれば、日本製には大きな集客が期待できます。ですから広告費用などがかかりません。

(2)中国の保税区倉庫からの発送

あらかじめ中国の保税区倉庫にモノを輸入しておき、そこから中国国内へ発送できるので、中国人ユーザーのもとへ、短い発送時間で届けることが可能で、リピート購入も期待できます。

(3)2大モールは代引きやアリペイ(支付宝)などの主要決済方法に対応

日本国内からは不可能な決済方法の代引きやアリペイ(支付宝)などの中国で主要な決済方法が使えるため、中国人がモノをECサイトで購入する心的不安が軽減できます。

 

このような理由から、2大モールへの出店は、越境ECの成功も期待できますが、強い商品力がないと、モール内での独自のブランディンが困難です。また在庫管理も、2016年9月現在は、2大モールと、自社ECサイトの在庫管理の一元化の連携がモール側が”システムの口”を用意していないため不可能なデメリットもあります。

中国政府が2016年4月から新税収制度をスタートしました。ポイントは以下の3点です。

1.保税区を利用しての、商品リストを発表。リスト製品に輸入許可証はいらない
2.リスト以外の製品には、輸入許可証が必要で手続きや審査が大変
3.1回の購入金額上限が2000元(日本円で3万円)これを超えると一般貿易の課税がかかる

中国政府の政策はよく変わりますので、そういったリスクも中国向けの越境ECには含んでいることを考慮すべきです。

そしてこれらのモールへの出店は、ECコンサルの会社がサポートサービスを展開していますから、一度相談してみるとよいでしょう。

それでも、自社ECサイトで越境ECをつくるなら

越境ECの難しさと、越境ECの始め方について解説しましたが、それでも自社ECサイトを越境ECを検討する企業はいると思います。おそらくそういった企業は、無印良品のように中国でも高いブランド力のある企業や、中国人観光客が実店舗に集客できている企業に限られます

中国向け越境ECの自社ECサイト構築で困難な点はなんといっても、中国人の集客です。ですから自社ECの中国語対応や、元の通貨対応などよりも、集客できるかが自社ECサイトでの越境ECのキーなのです。

本日私が最後に提案するのは「越境EC × オムニチャネル」です。

越境EC × オムニチャネル戦略とは?

自社ECサイトによる越境ECを、成功させるには、来日中国人からメールアドレスを収集し、中国人が帰国後も、メールマガジンで再購入を促進させるのです。

例えば食品や化粧品などは、量が限られていますから、自分たちが使ったり、お土産として渡せばなくなります。そうすると「もっと買えばよかった」「もっと欲しい」と質の高い日本製なら必ず思うはずです。

そこで中国人が来日した時にメールアドレスを取得したり、再購入促進のためのチラシを配っておくことで、自社ECサイトに集客できます。

スマホと連動させ、QRコードなので、カンタンに会員登録させて、リアルの接点を、WEBに誘導して、顧客満足度を極限に高める。そう、自社ECサイトによる越境ECの成功の秘訣とはオムニチャネルなのです。

この方法しか自社ECサイトで、越境ECを成功させる方法はないと思います。

さらに会員には、「友達紹介キャンペーン」と称し、友人を紹介した中国人ユーザーに対して、特典をつければ、日本に来たことない中国人も会員にできますし、そういったユーザーが日本に来たときに、実店舗にきてくれるかもしれません。まさにオムニチャネルです。

おそらく、越境ECというのは、現場担当者が企画するというより、経営陣から現場に「越境ECを検討してくれ」と言われるケースがほとんどだと思います。もしそういった方が、このブログを読んで、「越境EC × オムニチャネル」を企画の一助になれば幸いです。

さて、では越境ECを構築する場合ですが、大手ECパッケージベンダーに声をかけてみてください。フルスクラッチで作るメリットはコストやワークロードの観点からもありませんよ。必ずECパッケージで検討しましょう。下記のリンクをご覧ください。

大手ECシステムパッケージ各社徹底比較 →